第一章 君の夢 4

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 がむしゃらに腕を振り回すと、一瞬、縛めが緩んだ。その隙に、スペイギールはまろびながら寝台を降りて駆け出した。
 さっきまでおのれを支配していた恐怖は、ふしぎと消えていた。ただエオルゼを守りたい一心だった。
 急所を目がけて刃を突き出し、今まさにエオルゼを切り刻もうとしている敵の懐へ飛びこむ。
 捕らえた――と確信した。しかし、あと一歩のところで、急所が目の前から消えた。事態が掴めずに、スペイギールは足を止める。

「え……?」

 直後、頭上から烈しい殺気に襲われて、本能的に横へ飛び退いた。
 敵の白刃が左肩を掠めて床へ振りおろされる。直前までスペイギールがいた位置へ、正確に。
 呆然としたあと、ようやく状況を呑みこむと、どっと脂汗が噴き出した。
 避けられたのは偶然だ。もし明るかったら、竦んで動けないまま、額からまっぷたつに割られていただろう。

「チッ、すばしっこいガキだな」

 男の血走った瞳が、鬼火のように闇夜に燃えていた。スペイギールを見下ろし、恐れに揺れる碧眼を見つけると、にたりと三日月に弧を描く。
 殺意に充ちた目だった。森の中で出会う獣とはまるでちがう。生きるためではなく、純粋な殺戮を目的とした目だ。
 未知の敵意が鎖となって、スペイギールをその場に縛りつける。俊敏に動いていた身体は硬直し、目だけが射取られたように男の顔を凝視する。
 汗に剣柄を握った手が滑りかけて、あわてて握り直したが、そのわずかな動揺も男には伝わったようだった。敵は愉快げに笑いながら、ふたたびスペイギールの脳天を目がけて刃を振った。
 ひゅっ、と空気を切り裂く音が前髪を揺らす。

「っ!」

 とっさに動いたのは両腕で、スペイギールは反射的に短剣を額の前にかざした。しまった、と我に返ったとき、手首から肩へ骨が砕けるような衝撃が走る。
 一番やってはいけない手を打ってしまった――スペイギールが血の気を引かせるのと同時に、敵が失笑をもらす。
 刀身の長い剣に、ナイフ程度の短剣で真っ正面から立ち向かっても、敵うはずがない。受け止められただけで奇跡だ。力で圧されれば、スペイギールが負ける。
 男は舌をなめずりながら、全身で剣を押した。スペイギールも全身で耐えるが、大柄の男の体重に腕が震えはじめる。

「う……っ」

 このままではまずい。けれど、逃げ場もない。必死で起死回生の方法を考えるが、混乱が勝ってしまい何も思いつかない。
 その時、どん、と衝撃とともに男の巨体がよろめいた。目の前の獲物に夢中だった敵は横からの急襲に備えられず、ぶつかってきた相手ともつれ合いながら床に転がった。
 さきに、小柄な方が起きあがる。男よりもずっと小さく、ずっと華奢な影は、エオルゼだった。
 彼女は敵の脇腹に埋まる短剣を引き抜くと、刀身を振って血糊を払った。足元に鮮烈な血の臭いが走った。

「――くそっ、ガキが!」

 低く唸りながら、男もゆらりと身体を起こす。黒い影から憤怨と殺気が瘴気のように押し寄せて、スペイギールの喉を締め上げる。
 もう武器の大小や間合いなど関係ない。男が腕を伸ばすだけで、エオルゼは縊られてしまう。

「エオルゼ……!」

 身を乗り出したが、エオルゼの背中までは遠かった。腕を伸ばし、砕けた足を叱咤して駆け出しても、スペイギールの指先は届かない。なのに、敵の手はあと少しでエオルゼの細い首に届いてしまう。
 エオルゼはわずかに眉をひそめただけで、短剣をかまえたまま、すっとうしろに下がった。男が口汚く罵りながら追いかける。その背中に人影が現れ、黒い腕が敵の喉に絡みついたと思うと、正確に喉笛を捉えて力のままに牙を突き刺した。
 沈黙ののち、バルクが剣を抜きながら身を引く。男は血の泡を吹きながらその場にどうと頽れた。しばらくはぶつぶつと罵詈雑言を唱えていたが、やがてそれも切れ切れになり、静寂に呑まれていく。
 気づくと、部屋の外に追いやられていた雨音がいつのまにか戻っていた。

「スペイギール様! 敵の眼前に飛び出すなど、いったい何をお考えですか!?」

 バルクの怒声が耳を劈いた。へたりこんだスペイギールを、ダシュナとラズウェーンも鋭い目つきで睨めつけた。

「ご、ごめん。ごめんなさい」
「実戦慣れしていないうえ、臣下をかばうなど、主君としてあってはならない行動です。我々はスペイギール様をお守りするためにいるのです。それをおわかりですか」

 ラズウェーンの説教まで続いたら、スペイギールには反論のすべもない。ダシュナは今回は間に入ってはくれなさそうだった。

「……軽率……だったと、思う。ごめんなさい」

 しょんぼりとうなだれる主君の姿に、三人はそれぞれため息を吐いた。ダシュナが前髪を掻きあげながら言う。

「肝が冷えましたよ、まったく。怪我はありませんか?」
「ない。平気――」

 スペイギールは喉の奥へ語尾を押し戻した。廊下がにわかにあわただしくなっていた。何人もの駆け回る足音、状況を尋ねて叫ぶ声。そしていくらも経たないうちに、大きな足音を立てながら、寝衣姿の司祭が部屋に飛びこんできた。

「スペイギール様! ご無事でございま……、ひいっ!」

 遅れてやってきた従者のランタンによって、室内の惨状があらわになった。
 血の海にはすでに息絶えた男たちが横たわり、血痕が寝台の帳や壁にまで飛んでいた。四晶家が握る短剣はてらりとした油膜に濁り、袖口まで赤く染まっている。

「侵入者が五人。どこから入りこんだのか知らぬが、周囲の警備はどうなっている」

 ラズウェーンが手の甲で汗を拭いながら問い詰めた。睨まれた司祭は、ただでさえ竦んだ身体をさらに震えあがらせて答えた。

「こ、この棟は、スペイギール様と同行者の方以外、誰も使用しておりません。僧兵が建物の出入り口を見張っておりましたが、そ、そのほかは……」
「僧兵は怪しい者を見なかったのか?」
「い、いえ。物音で異変に気づき、私のもとへ走ってきました」

 つまり警備は手薄で、犯人がどこからどうやって侵入したのかもわからない、ということだ。
 二回りも小さくなって怯える司祭をラズウェーンは無言で睨めつけていたが、それ以上追及はしなかった。腰を抜かした司祭に聞いても無駄だと判断したのだろう。

「お、お許しを。どうかお許しください。スペイギール様、私めはけっして二心などございません。スペイギール様、どうか、どうか……」

 両手を祈りに組み、涙を滲ませながら、司祭がにじり寄ってくる。昨夕の彼の行動を引きずっていたスペイギールは、床に座りこんだまま思わずのけ反った。

「司祭殿、貴殿を責めはしない。我々も侯爵が手配してくださったことに甘え、すっかり油断していた。非は双方にあるだろう」
「で、では、ラズウェーン様」
「だが、どこの手の者か探る必要がある。ただの追い剥ぎならよいが、国王の刺客だとしたら侯爵ともご相談し、領内や周辺の警護を強化していただかねばならない。協力してくれるな?」
「はい、はい。もちろんでございます。我々は皆、ラスミアシェリカを軽んじる不届き者を許しません。賊の手がかりを得るためならば、いくらでもご協力いたします」

 司祭はくりかえしうなずき、全身で服従の意思を示した。
 よろしいですか、とラズウェーンに問われて、スペイギールも無言であごを引く。泣き崩れた司祭は、蹲りながら女神への感謝を唱えている。
 セインの手を借りて立ち上がると、スペイギールはそっとその場を離れた。泣きつかれるのはもう勘弁してほしかった。
 寝台の、血糊を免れた場所に腰を下ろす。汗でべたついた顔を拭い、額にはりついた前髪を払った。脚衣は汚れてしまっていたし、裸足の足はぎょっとするぐらい暗赤色に塗れていた。

「すぐに水を用意します。そこで少々お待ちを」

 バルクが駆けつけた家臣に用事を言いつけた。
 別室で休んでいた家臣団や僧たちが持ってきた灯りで、漆黒に塗り潰されていた部屋は昼間のように明るく、人の出入りで騒がしくなっていた。中央ではラズウェーンを中心に四晶家が額を寄せあっており、てきぱきと各家の臣下に指示を飛ばしている。並んで座ったセインとともに、ふたりはぼんやりとその様子を眺めた。
 いましがた経験した出来事に、目の前に広がる死闘の跡。五人分の血で濡れた床は赤黒く、塩水じみた臭いはしだいに死臭へ移ろっていく。
 誰かが開けた雨戸から、澄んだ風が入ってきてスペイギールの頬を撫でたものの、凄絶な異臭に退散していった。
 おたがい何を考えているのかは、おぼろげながらも察せられた。ある程度の覚悟は、剣術を習いはじめた時からできていたはずだった。だが、現実は想像よりはるかに苛酷で、つむじ風のように一瞬だった。
 バルクの家臣が戻ってくると、盥に水と湯をはってくれた。つま先まできれいに洗い、湯に浸かって温まってから、ようやく靴を履く。

「お部屋の支度ができましたので、どうぞお移りください」

 促されて、スペイギールはのろのろと立ち上がった。そのうしろを、一緒に足を清めたセインもついてくる。
 廊下へ出ると、部屋いっぱいに充満していた臭いもいくらかましになった。
 寝台を飛び出してきたのだろう、案内する男は寝間着のままで、靴紐も結んでいなかった。それでも彼は駆けつけるのが遅れたことをスペイギールに詫び、怪我がないか心配した。「大丈夫、気にしなくていいから」とかしこまる男を宥めるのもひと苦労だった。
 新しい部屋は以前のものとそっくりそのままだったが、兵が五、六人は待機していた。さきほどまでは四晶家とセインだけに囲まれていたので、スペイギールにしてみればだいぶ気が楽だったのだが、賊に襲われたとあってはわがままも言えない。
 彼らの指揮を執っているのはエオルゼだった。鍛えあげられた男たちのまんなかに立つと、よりいっそう細く映る。足は洗ったらしく長靴を履いていたものの、外套に隠した寝間着からは血の臭いがしていた。
 エオルゼはスペイギールとセインの姿をちらりと確認しただけで、特別な関心を抱いた様子はなかった。伝達をすませると、目礼だけして立ち去ろうとする。

「っ、エオルゼ」

 すれちがいざま、スペイギールはとっさに彼女の手首を掴んだ。
 亜麻の袖が切り裂かれ、白膚に赤い裂傷がくっきりと走っていた。腕は外見よりずっと痩せていて、よくあの大柄な男と相手ができたなと驚くほどだった。
 弾かれたようにエオルゼの顔が上がる。再会してから、初めてまじえた瞳だった。はっきりと自分に焦点が合わせられていることに、スペイギールは言いようのない喜びを覚える。
 襟足で切りそろえられたやわらかな栗毛。その合間からのぞく愛らしい耳朶。くっきりとした眉と、長い睫毛にていねいに縁取られた榛色の双眸。昔よりは日に焼けているものの、寒村育ちゆえの白い肌に、すっきりとした鼻梁。薄めのくちびるの表皮はひび割れて赤く、それがまるで熟れ落ちた果実のようで。

「……ギール様」

 ほとりと落ちた呼び名に、スペイギールは「うん」とうなずいた。そこでようやく、エオルゼは目の前にいるのがスペイギール本人だと理解したらしかった。

「エオルゼ、怪我してる。手当てしないと」

 自分を見つめていた視線が、のろのろと傷口へ滑っていく。
 ふと、エオルゼの顔を見下ろしていることに気づいた。ずっと見上げるだけだった彼女の背を追い越したという発見は、スペイギールの胸をますます躍らせた。

「……いえ、大丈夫です」
「でも」
「さきほどは申し訳ございませんでした。どうか、二度とあのような行いはなさらないでください」

 やんわりと、しかし強引に、掴んだ手を振り払われる。

「エオルゼ?」

 彼女はかたくなだった。昔のようにスペイギールに笑顔をくれるわけでもなく、言葉に親しみが感じられるわけでもなく、ただ淡々と、義務的に接しているように思える。一瞬だけ顔を見せた少女は、すぐに力ない表情の下に隠されてしまった。

「セイン、スペイギール様のおそばを離れないで。あなたたちも、ここでスペイギール様をお守りするように」
「はい。かしこまりました、エオルゼ様」

 兵士たちは、エオルゼの命令に背筋を伸ばした。
 それきり、彼女がスペイギールを視界に収めることはなかった。では、と頭を下げただけで、まっすぐに退室してしまった。
 規則正しい足音が廊下に消えていくのを、スペイギールは茫然と立ち尽くしたまま聞いていた。色を帯び、熱を上げた心は、いまや陽の射さない谷底へ突き落とされたようだった。

「なんで……」

 いったい、自分は何をしてしまったのだろう。なぜ、エオルゼは昔のように親しくしてくれないのだろう。
 離れていた年月があまりにも長すぎて、彼女にどんな心境の変化があったのかスペイギールにはわからない。触れられない歯痒さと無知な自分がもどかしい。

「……ギール様。これ、着替えです」

 振り返ると、セインが新しい寝間着を手にして立っていた。幼なじみが持つまっさらなそれを見つめたあと、スペイギールは自分の髪を鷲づかみにしていた指をといて受け取った。

「……ありがと……」

 上下一式の寝間着はやけに肌触りがよく、真珠のようにつややかな色をしていた。誰が用意したのか、絹の寝間着などスペイギールには初めての経験だった。

(エオルゼが手配したのかな……)

 見たことはなくても、絹が遠い東国から輸入している高級品なことは知っている。それを渡されるということは、彼女がスペイギールを相応の人物だと見なしているからなのだろうか。

「……ギール様」

 手元から視線を上げる。スペイギールはぎょっとした。セインが自分に向かって頭を下げていた。

「せ、セイン?」
「さっきは姉をかばってくださってありがとうございました」
「そんなこと……」
「おれは、跡継ぎとして姉さんの役に立てると信じてた。スペイギール様の力になれると思っていました。でも、さっきは足が震えて、一歩も動くことができなかった。目の前で姉さんが戦っているのに、何もできなかったんです」

 伏せたセインの睫毛が震えている。握りしめた両手は白く、くちびるには血が滲んでいた。

「こんなことを言ったら怒られるだろうけど、ギール様があのとき飛びこんでくれなかったら、姉さんはきっと死んでいました。姉さんが無事なのはギール様のおかげです。本当にありがとうございます。おれは、一生ギール様のために尽くします。母なる女神と父なる始祖に誓います」
「……ばかだろ、おまえ」

 スペイギールは栗色の渦を巻くつむじへ手を伸ばし、指でぶすりと中心を突いた。

「痛っ! 何するんですか!」

 いきおいよく顔を上げたセインに、もう一度「馬鹿だろ」と罵声を浴びせる。眉を吊りあげる幼なじみに対して、スペイギールの顔には引き攣った笑みがあった。

「そんなの、動けなくて当たり前だろ。おれだってバルクのうしろで震えてたんだ。何もなかったら、きっとあのまま布団をかぶったままだった」
「でも実際、ギール様は姉さんのために動いたじゃないか」
「それは――わかるだろ?」

 低く落とした問いかけは、たやすく長雨に攫われていった。
 怒りに赤らんでいたセインの目元から力が抜けていく。まっすぐにスペイギールを凝視する双眸は、若い生命力にあふれていた。スペイギールの碧に姿を映してもなお、そらされることはない。
 こんなにも似ているのに、こんなにもちがうことがただ悲しい。谷底に落ちた心に冷たい水が浸みていくようだ。

「……それより、その変な言葉づかい、何?」
「え? ああ、姉さんがギール様に敬語を使いなさいって」
「いいよ、そんなの。いまさらかしこまられても気持ち悪い」
「でも」
「変な言葉使うなよ? これは命令だから」

 鼻先に人差し指を突きつけると、う、とセインは口ごもった。いつもなら噛みついてきて口げんかになるだろうに、その兆候はない。

(セインのばーか)

 律儀に姉の言いつけを守る姿勢は、スペイギールをますます水底へ沈めていく。水は澱となってスペイギールにまとわりつき、全身の熱を容赦なく奪った。空気は痛いほどに冷たく、息をするのも苦しい。まるで喉を絞められてるかのように。
 幻想を頭から追い出しながら、スペイギールはおもむろに寝台へ寝転がった。背筋に鳥肌が立っている。身体も心もひどく疲れて泥のようだった。

「お休みになりますか」

 護衛を任せられた男のひとりが尋ねた。腕で目を覆いながらスペイギールはうなずいた。

「お着替えは……」
「いらない」

 絹の寝間着を布団の上に放り出し、靴と脚衣を脱ぎ捨てて、寝具にもぐりこむ。とても眠れそうにはなかったものの、放っておいてもらえるなら目を瞑っていた方がましだ。
 まなうらを橙色に明るませていた光がやわらぎ、人の気配が部屋の隅へ遠ざかっていった。火を消したあとの、灯心が焦げる臭いがかすかにただよう。会話は絶え、雨滴が雨戸を叩き出す。

(……ばかなのは、おれの方だ)

 身体をねこのように丸め、頭から毛布をかぶり、護衛たちから顔が見えないように寝返りをうった。
 顔を埋めた敷布からは、やはり太陽の匂いがした。少し前までその匂いが日常にあったのに、今のスペイギールにははてしなく遠く感じられる。
 悪夢に巻きこまれると思っていた。けれど、むしろあたたかく平穏な生活こそが夢だったのではないだろうか。
 自分の生まれも、立場も、理解しているつもりだった。家族が敵と命のやりとりをしていることも、そのせいで死んでしまったことも。
 そして今度はスペイギールが彼らの降りた舞台に立つ番だった。今まで舞台袖で控える補欠でしかなかった、脇で見ているだけだったスペイギールが。
 長剣を振りおろす男の凄絶な表情が、脳裏にこびりついて離れない。人の命が簡単に握りつぶせるものだと知ってしまったときの、あのはらわたが浮くような恐怖も。
 そして何よりも灼きついているのは、暗闇の中、短剣で敵に立ち向かう頼りないうしろ姿。自分の命を盾にスペイギールを守ろうとする人の背中が、無謀だと知りながら男に体当たりしたエオルゼの行動が、一番恐ろしい。

(……ごめん、エオルゼ)

 追い出したはずの澱が刃となり、鋭利な切っ先をスペイギールに突き立てた。胸の中心で疼く痛みに爪を立てる。シャツを握りしめても、痛みはいっこうに治まらない。
 ヘリオスという旗幟を守るため、彼女たちはみずからを盾にし、身を差し出す。
 それをようやく思い知った。